警察官が、その業務上、一番取り扱いたくない事件・事故って何かわかりますか?
それは、身内を捕まえることです。家族という意味での身内ではなく、同じ職業である警察官を捕まえるようなことには関わりたくない、という意味です。※もちろん家族を捕まえるのも嫌でしょうけど…
なぜかって?それは簡単、大問題になるからですよ。警察官の犯罪は、社会的反響が大きいですからね。捕まえる側が捕まったとしたら、しゃれにならないでしょう?
そのため、「採用する側」から見たときに、警察官採用試験の受験者・採用候補者が、
- 治安の重責を担う「倫理観」を持っている人なのか
- 将来にわたってその精神を維持していける人物か
見抜くことはとても重要なことです。警察官としての資質のうち重要なこととして、その倫理観が問われるわけです。
では、警察官に求められる倫理観とはどんなものでしょうか?
正義感があること?物怖じしないこと?意志が強いこと?
いずれもそうですが、もっと”警察らしく”見てみましょう。
職務倫理の基本
実は、平成12年国家公安委員会規則のなかに、「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」という規則があります。この規則は、警察職員が保持すべき職務に係る倫理(以下「職務倫理」という。)及び警察職員の服務の基準を定めることを目的としています。
この規則の第二条に、警察官としての倫理観の基本が定められています。
第二条 警察職員は、警察の任務が国民から負託されたものであることを自覚し、国民の信頼にこたえることができるよう、高い倫理観の涵養(かんよう)に努め、職務倫理を保持しなければならない。
2 前項の職務倫理の基本は、次に掲げる事項とする。
一 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。
二 人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること。
三 規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること。
四 人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。
五 清廉にして、堅実な生活態度を保持すること。
警察官の精神は、まさにこの5つの文章に集約されています。
涵養(かんよう)に努める
この精神、最初からすべてが完璧にある必要はありません。涵養(かんよう)に努め、とありますよね?
涵養とは、水がしみこむように自然に、少しずつ教え養うという意味です。警察官になろうと思ったあなたには、このうちのどれかがすでにあるはずですから、残りについては、警察官になってから成長する過程で徐々に身につけていけばいいのです。
面接では、
- あなたがこれまで経験した出来事の中で培われたこと
- 警察官になったのち、どういう姿勢で職務に臨みたいか
という点において、この精神を意識するとうまくいくでしょう。
職務倫理の制定背景
懲戒処分、簡単に言うと不祥事のことですが、警察庁によると、令和2年中の全国警察職員の懲戒処分者数は、全国で229人だったとのことです。職務倫理に関する規則が定められたのは、平成12年(西暦だと2000年)でしたが、当時の懲戒処分人数は年間でなんと500人以上。
国民の信頼を失墜した警察は、刷新会議や緊急提言を受けて改革に取り組み、職員への浸透を図り、20年かけてようやく半数くらいに抑えられるようになったのです。この点から見ても、職務倫理の重要性を読み取れますね。
さて、初回から精神的なお話になってしまいました。でも、初回だからこそ、警察官を目指す皆さんにお話ししたかったことです。ぜひ、この職務倫理を参考にして面接対策を考えてもらえたらと思います。また、モチベーション向上になっていたら、嬉しいです。
反対に、「え?この5つの文章、まさか覚えさせられたりするの?」と思う方がいたら、警察官になるのはやめておいた方がいいと思いますね。
断言できますよ。
これくらいを覚えられないようだと、後々、もっと大変なこといっぱいあります。